「小鹿野歌舞伎手習い始め」其の十『桟敷席』
毎週金曜日更新!最終回
東西さんによる小鹿野歌舞伎手習い始め其の十
「桟敷席」
平成27年の小鹿野歌舞伎のエポックメーキング(歌舞伎でこんなカタカナ言葉はふさわしくないですが)は、10月の古鷹神社公演でした。
50年ぶりという話題もさることながら、桟敷(さじき)席のある芝居小屋を使ったことです。
秩父には21棟の歌舞伎舞台があるそうですが、桟敷と屋根を備えた小屋は古鷹神社だけということです。
主催者の方は、当初、芝居小屋と銘打つには疑問があったということですが、
歌舞伎を上演してみて「間違いなく芝居小屋」だと気がついたそうです。
常設の花道はもちろん、下手上手両方に作られた桟敷席は本格的なものでした。
そこからの眺めは、舞台全景が見えるし、役者との距離は近いし、居心地はいい、という良いこと尽くめです。
まさに劇場の特別観覧席といえます。
桟敷とは、広辞苑によりますと、
①祭の行列などを見物するために高く構えた床。さんじき。
②劇場・相撲場などで、板を敷いて土間より高く構えた見物席。江戸時代、芝居小屋では土間の左右に上下2段の桟敷席を構えた。
とあります。江戸時代は芝居見物をかねてお見合いが設定され、男女が東西の桟敷に分かれて対面するという粋な演出もあったそうです。
さじきの語源は古代祭祀で神様をお招きする場とされた「さずき(仮に構えた棚または床)」が変化したといいます。
『宇津保物語』という平安時代の書物にあることから古くからあった言葉といえます。
どうも昔から貴族とかお大尽の特等席は必要だったのでしょうが、庶民には縁遠いものですね。
歌舞伎座でも3階席の金額の5倍ですからね。
確かに掘りごたつ式でゆったりと座れ、お茶やお弁当の配達サービスもあり、花道の役者さんを近くで見られるという特権があります。
一度ご利用ください。
でも客席からはひな壇のお内裏様のように目立つのでお召し物にお気遣いを!
「天井桟敷」という言葉があります。劇場で、後方最上階に設けた低料金の席をいいます。
大昔のフランス映画「天井桟敷の人々」は1840年代のパリ「犯罪大通り」を舞台に様々な人間模様を描いたものですが、素晴らしい名作でした。
小鹿野歌舞伎も芝居小屋に集う様々な方々とともに、記憶に残る傑作を作っていければと思っています。
(東西)
*古鷹神社での公演の様子がYouTubeでご覧になれます。