コラム「小鹿野歌舞伎手習い始め」其の六『御見物』
毎週金曜日更新!
東西さんによる小鹿野歌舞伎手習い始め其の六
「御見物」
歌舞伎役者にとって、もっとも気になることの一つが、観客の入り具合ではないでしょうか。
芝居の世界では、「御見物(ごけんぶつ)」といい、お客様あっての芝居ですからとても大事にしていました。
今では、「見物」はのんびりと好奇心から見て楽しんでいる人で、「観客」は芝居を熱心に見守る人という印象ですが、
古くからは「御見物」といっていたようです。
芝居は楽しむもので、見て学ぶものではないですから、「見学」でない方がいいですね。
ファンだとかサポーターとかギャラリーなんていうと、ちょっと落ち着かないですね。
さて、御見物は一人でも多い方が、役者にとってはやりやすいものです。
せっかく覚えたセリフや振りですから、大勢の人の注目を集めてできるのがうれしいところです。
舞台の上で御見物の視線を独り占めできる喜びは、経験してみないとわからないといいます。
まして拍手をいただいたり励ましの掛け声があったりすると、気持ちが乗ってくるものです。
芝居は役者だけでなく御見物の力も必要なのです。
全国各地の地芝居の公演では、一度に二千人!なんていううらやましいお話を聞きます。
小鹿野町では、年に何回も歌舞伎を上演しているため、どうしても御見物の数が分散してしまうのではという声を良く聞きます。
寒い季節の夜の上演ですと、お馴染みのカメラマンの方と御見物がちらほらという状況で、
口の悪いお方は「見る人より役者の方が多いじゃないか!」とおっしゃいます。
先輩方からは「昔はえら、見手(みて)がいた。愛宕座もお天狗様も入りきれないぐらいだった」
と自慢されますと保存会員としては、益々悔しい思いがします。
「歌舞伎は難しい、何をやっているかわからない」とよく言われます。
でもぐっと我慢して見ていただくとその魅力がわかってきます。
『小鹿野子ども歌舞伎』の子どもたちは、自分たちの演じている芝居の意味がよくわかっていないのですが、
一生懸命に表現しようとする姿勢は見る者に感動を与えます。
今後も見る前の解説や歌舞伎に親しむ講座など努力はして参りますが、どうぞ小鹿野町へ一度足をお運びください。
来る11月の『第49回郷土芸能祭』では、
「かくもにぎにぎしく御来場賜りました皆々様に、厚く御礼申し上げます~」と呼び掛けたいものです。
頑張りましょう!
(東西)