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観劇前の予備知識あらすじ編~「三人吉三巴白浪 大川端之場]

小鹿野歌舞伎 歌舞伎 三人吉三

「三人吉三(さんにんきちさ)」という名前、または「こいつぁ春から縁起がいいわえ~!」というせりふで、
歌舞伎に縁のない方でもどこかで聞いたことがある方も多いと思います。

それほど、このお芝居は、江戸歌舞伎の市井の人々を題材にした世話物の、名作中の名作と呼ばれているものの一つです。

作者は、これまた有名な「河竹黙阿弥(かわたけもくあみ)」、ご存知、「白浪五人男(しらなみごにんおとこ)」の作者でもあります。

ところで題材の三人吉三とは、三人の吉三郎(きちさぶろう)という意味で、巴白浪の白浪は、既述の白浪五人男と同様、盗人という意味です。

白浪五人男は5人の盗賊、三人吉三は3人の盗賊のお話なんです。

さて、あらすじに入ります。冒頭部分ー2人の男が、何やら刀を巡って争っています。

正直この部分はただ傍観していていただけたらと思います。

というのも、このお話は、もともとお武家さまのお家騒動が軸になった長いお話の一部でした。

が、今はこの「大川端之場」を単独で演じられることも多く、この冒頭部分もストーリーの一部ではあるのですが、
単独の上演の場合はあまり関係がないので、説明はあえて省略させていただきます。

さて、二人のやり取りの後、1人の若い女性が出てきます。

夜鷹(よたか)をしているおとせです。
夜鷹とは、路上で商売をしている、いわゆる売春婦です。

おとせは、客が忘れていった百両のお金を、その客に届けてあげようと道を探し歩いていました。

(おとせちゃんは親切ですね! 決して自分は恵まれた身の上ではないのに…。)

すると、そこへ、裕福そうな身なりをしたお嬢様が、おとせに道を訊ねてきます。

お嬢様が供のものとはぐれてしまったというので、優しいおとせは、そのお嬢様を道案内してあげようとします。

ところが、そのお嬢様、おとせの持っていた百両を盗みとると、おとせを川へ突き落してしまいます!

そこへ冒頭に出てきたひとりが、また金を奪おうと刀で斬りつけてきますが、このお嬢様は、実は男で、強かった!

百両どころか、さらに刀まで奪ってしまいました。

この盗人こそ、3人の吉三郎のひとり、お嬢吉三でした!

百両も手に入れ、おまけに上等そうな刀までも手中に収め、上機嫌になったお嬢吉三が、

ここで、あの有名な七五調のかっこいいセリフを言います!

「月もおぼろに しらうおの かがりもかすむ 春の空~(以下省略)~こいつぁ春から 縁起がいいわえ」

するとそこへ、通りかかった浪人風の若い侍が、お嬢吉三に声をかけてきます。

慌てて女のフリをするお嬢でしたが、すでにバレていました。

浪人風の若侍は、お嬢吉三に「その百両を貸せ」と言い出します。

この侍こそ、三人吉三の2人目、「お坊吉三」です。

お坊はおぼっちゃんのお坊で、もともと御家人のボンボンだったことからこの名前がついています。

ふたりは近頃評判の悪党でしたので、お互いの素性が判ると、金を巡って斬り合いになります!

2人が命がけの争いをしていると、そこへ、かつては出家のお坊さんだったという男が「待った待った!」と止めに入ってきます。

この人こそが3人目の吉三、「和尚吉三」です!

和尚吉三は、自分の両腕を斬り落としてもいいから、百両を半分ずつ分け合って持っていけというようなことを言い出し、二人のけんかの仲裁に入ります。

そんな心意気のある和尚吉三にすっかり感服してしまった、お嬢吉三とお坊吉三。

そこで3人は、和尚吉三を兄貴分として立てて、兄弟の契りを結ぶことにします。

3人は、盃に互いの血を入れ、血盃を交わします。

(いや~やくざ映画で義兄弟の契りを交わす場面を観たことがありますが、江戸時代からの習わしだったんですね~!)

そして、百両は命が助かった御礼にと、和尚吉三へ渡すことにして...。

小鹿野歌舞伎 歌舞伎 三人吉三

兄弟もできたし、、、ハイ! 気持ちも晴れ晴れ、めでたしめでたし~~~!

「三人吉三巴白浪 大川端之場」でした。

要するに、この場面にはほとんどストーリーはありません。

ですが、そこには、カッコよさ、きっぷのよさ、いさぎよさ、契りなどなど、

江戸の人たちが夢中になって拍手喝采したであろう,魅力に溢れています!

皆さんも、このお芝居を観るときは、ぜひ江戸っ子になった気分で、掛け声をかけたり、拍手喝采してみてはいかがでしょうか?

*掲載の写真は、小鹿野子ども歌舞伎平成28年浅草公演のものを使用しています。

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