観劇前の予備知識一「菅原伝授手習鑑 寺子屋の場」あらすじ編
![寺子屋](https://i2.wp.com/oganokabuki.com/wp-content/uploads/2019/03/名称未設定-16jpg.jpg?fit=840%2C630&ssl=1)
「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」は、菅原道真が藤原氏の陰謀で左遷された事件を元にして作られています。
後に学問の神様となる菅原道真と、道真の政敵である藤原時平に、それぞれ分かれて仕える三つ子(梅王丸・松王丸・桜丸)が、運命に翻弄される様子が描かれた物語です。
四段目「寺子屋之場」
道真公に恩を受けた梅王・松王・桜丸の
三つ子の兄弟なのですが
今は、松王丸だけが、
敵方の藤原時平につかえています。
道眞から書道の極意を伝授され、
今は寺子屋をいとなむ武部源蔵は、
道眞の息子、菅秀才をかくまっていますが、
敵方にそのことが露見してしまい、
秀才の首を討てと迫られます。
![寺子屋 小鹿野歌舞伎](https://i1.wp.com/oganokabuki.com/wp-content/uploads/2019/03/名称未設定-1.jpg?resize=494%2C712&ssl=1)
写真↑ 寺子屋をいとなむ竹部 源蔵
そして、秀才の首が本人のものか確認する役目は、
その顔を知っている松王丸でした。
家へ戻る道々、
寺子屋の子供のひとりを代わりにするという
恐ろしいことを考える源蔵。
しかし、どの子にも秀才のような品格はなく、
松王丸にすぐにバレてしまうと思案しています。
寺子屋にもどると、源蔵の妻、戸浪が、いかにも品格のある男の子が、
新たに入学してきたことを伝えました。
![寺子屋 小鹿野歌舞伎](https://i2.wp.com/oganokabuki.com/wp-content/uploads/2019/03/名称未設定-2.jpg?resize=513%2C700&ssl=1)
源蔵の妻、戸浪
その品の良さそうな子の顔を見て、
「この子なら、身代わりになる」
と源蔵は入学してきたばかりの子を、道真の息子の代わりに殺して
松王丸に差し出すことにしたのでした。
源蔵と戸浪は、今日寺入りしたばかりの子を、いかに菅秀才の身替りとはいえ
命を奪わなければならぬとは…と、
「せまじきものは宮仕え」という有名はセリフとともに涙に暮れるのでした。
と、そのところに、
秀才の首を渡せと、藤原時平の家来と松王丸がやってきます。
![寺子屋 小鹿野歌舞伎](https://i2.wp.com/oganokabuki.com/wp-content/uploads/2019/03/3.jpg?resize=547%2C696&ssl=1)
敵方に仕えている松王丸だが。。。
覚悟を決めて、身代わりの子の首を討ち差し出す源蔵。
松王丸は、その首をみて
「菅秀才に間違いない」
と確認して 立ち去っていきました。
ほっと一息ついた源蔵のところに、
身代わりとなった子供の母親が息子を迎えにきます。
![寺子屋 小鹿野歌舞伎](https://i1.wp.com/oganokabuki.com/wp-content/uploads/2019/03/名称未設定-4pg.jpg?resize=504%2C758&ssl=1)
千代・・・殺された子供の母であり、実は松王丸の妻
追い詰められて、母親も討とうとする源蔵。
そこに松王丸が現れます。
実は、その女性は、松王丸の妻、
首を斬られた子供は 松王丸の子供だったのです。
松王丸は自分の一人息子の小太郎を、
あらかじめ寺子屋に入学させておき、
源蔵に菅秀才の身替りとして殺させたのです。
立派に身代わりになったときいて、涙しながら喜ぶ松王丸。
源蔵夫婦も涙しながら、松王丸夫婦と香をたき、
小太郎を野辺送りにするのでした。
![寺子屋 小鹿野歌舞伎](https://i1.wp.com/oganokabuki.com/wp-content/uploads/2019/03/5.jpg?resize=814%2C506&ssl=1)
ラストに白装束となって子供を弔う松王丸夫婦
江戸時代から何度も上演されてきたというこの作品。
一番の見所は、松王丸が首を確認するシーン
とも言われます。
自分の子供の首かを確認しながら、
横で見守る時平の家来に気づかれないように、
動揺を隠し、菅秀才に違いないと
言い切らなくてはならない松王丸の演技が注目されます。
寺子屋の冒頭は、村の子が集まって勉強しているのですが、
次第に相撲などをとったりして、子供たちが遊ぶ場面になっています。
ここは、ほぼアドリブで演じられる、愛嬌ある演技がみられるところです。
が、その後の展開は、上記のあらすじのように、人の感情に訴える重い展開になり、
みている人の涙を誘う場面になっています。
この芝居は、もともと人形浄瑠璃から来ていることもあり、太夫さんの語りによる
格式高い舞台ですが、愛らしい子どもが犠牲になるという内容だけに、
観客の心も自然と引き込まれてしまいます。
江戸の歌舞伎では、その役者の家によって型が違うそうですが、
小鹿野歌舞伎のお家芸はどのような型なのでしょうか?
250年以上受け継がれているという小鹿野歌舞伎の寺子屋、
機会がありましたら是非ご覧になりにいらしてください。
*写真は、H28年3月12日の日本武神社例大祭奉納歌舞伎より
(この記事は、© 2014 WABI×SABI~日本をもっと身近に~.https://withplace.info/
からの記事を参考にさせていただき、追記して掲載しています。)