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特集記事
「祭りの歌舞伎の原点、ここにあり!」-小森歌舞伎ー
現在の小鹿野町は、2005年に旧小鹿野町と両神村が合併してできた町です。
そのかつての両神村にある地芝居団体が、「小森祭りと文化を守る会」。
毎年10月の第2土曜日に行われる小森諏訪神社例大祭で歌舞伎を奉納するので、その歌舞伎は小鹿野歌舞伎ではなく「小森歌舞伎」と呼ばれています。
小森歌舞伎は、2000年に復活するまで38年もの間途絶えていましたが、地元の元『大和座』(*かつて小鹿野町にあっ歌舞伎一座)の役者であった斉藤さんが
「カラオケするより簡単!」
と地元の若い衆に声をかけて、再開されたそうです。
「実際やってみたら、とにかく大変!難しい!」
と言いつつも、会員は現在43名もいらっしゃるとのこと。大変な大所帯に、筆者はビックリです!
さて、お稽古の様子を見学させていただきました。
みると、師匠らしき方が見当たりません。聞けば、
「師匠はいねぇんだ。ここにいる全員が師匠!」
「2年芝居をやったら、おめぇは師匠だ!」
なんて言葉が飛び交っています。
5年ほど前に、小森歌舞伎を復活させた斉藤さんが他界。
なので、現在新たにチャレンジする芝居については、小鹿野歌舞伎保存会の記録映像等を教科書にしながら、役者が個々に勉強しているそうです。
そして、それぞれの役者さんが、
「ここはこうやるんじゃないか、ああやるんじゃないか。」
とみんなで切磋琢磨、創意工夫しながらひとつの芝居を作り上げていくそうです。
思うに、まったくやったことのないことを、いきなり自分の力でやることになるのですから、役者さんはなんて大変なことをするのだろうとお察しします。
例えば、義太夫に合わせてまるで踊っているかのような所作をする時などは、日本舞踊の経験者でなければ、物凄く訳の分からないフリであろうこと間違いなしです。
今年の上演プログラムの「弁慶上使」ではそういった所作も多いのですが、小森の皆さんはそれを見事に習得されていました。
「みんなが一生懸命やってるから自分もがんばんなきゃって気持ちになる。」
「2年やれば師匠って言われちゃうから、それくらいの気持ちでやってる。」
ところで、稽古場をぐるりと見渡すと、立派な大道具、小道具がチラホラ見られます。

「太十」で使われる障子。槍を突き刺すと血しぶきの付いた障子に差し替えられる仕組み

舞台に登場した本物そっくりの立派な駕籠

白浪五人男の捕り手が使う十手
これらは御年83歳の坂本さんがすべて手作りで作られたものだそうです。
「おれぁ何でも屋だい。」と笑顔の坂本さん。
舞台の装置もご自分で考えて設計するという切れ者中の切れ者!
会員の皆さんからもとても慕われていらっしゃいます。
祭りで奉納するための芝居の稽古は、毎年6月から週一でやっていて、稽古が終わると交流会が。
皆さん、ほんとに仲がいいです。
「周りのみんなが師匠!
歌舞伎はお祭りを賑やかにするもんだから、失敗をちょっとしたからっていいんじゃないの!?
歌舞伎はみんなで作るもの。
田舎の芝居、それが『小森流』!」
おしまいに、小森歌舞伎を観に行く方へ提案させていただきます。
ぜひ、食べ物、飲み物(お酒)を持参して、飲んだり食べたりしながら芝居を楽しんでください!
そして、おひねりをここぞという時に投げてください。
おひねりは、50円玉を入れたものを50円でその場で売ってます!
ちなみに、そのおひねりも会員の皆さんによる手作りです。
歌舞伎は祭りを盛り上げるものー、
「祭りを楽しんでもらうことが役者にとって何より!」
という小森歌舞伎の皆さんの温かい心意気を目いっぱい受け止めて、
飲んだり食べたり、、、
泣いたり笑ったり、、、
かつて娯楽のなかった時代に、唯一の娯楽であった『祭りの歌舞伎』を、
これからもずっと守っていきたいですね。
そんな、『小森祭りと文化を守る会』の皆さんでした。
*10月12日(土)に開催される「小森歌舞伎」の詳細は、
↓ ↓ ↓からご確認ください。
10/12小森歌舞伎詳細はコチラ