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2018年 小鹿野町郷土芸能祭特集4:津谷木部会

11月18日(日)郷土芸能祭のラストを飾る演目が、小鹿野歌舞伎保存会、津谷木部会の方たちによる「一谷嫩軍記 あばら家之場」です。
小鹿野歌舞伎保存会の中で、この「あばら家之場」を上演しているのは、津谷木部会の方たちだけです。
18日(日)15:25~START、どうぞお見逃しなく!

せっかくのお芝居をより楽しく観るために、、、「一谷嫩軍記 あばら家之場」の基礎知識とポイントをここでお伝えしていこうと思います。

左の写真は、今年の5月3日に開催された小鹿野町の津谷木地区に鎮座する木魂(きむすび)神社例大祭での公演の様子です。(*youtubeより引用)
この「あばら家之場」が上演されたのは、実に11年ぶりだったそうです。

「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」は、源平の戦いのストーリーの中から、『一ノ谷の合戦』を題材にしたものがたりです。
ものがたりは、老女、林(はやし)のあばら家に、一の谷の戦場へ向かう平忠度(たいらのただのり)が一夜の宿を頼みにやって来るところから始まります。

林はかつて歌人・藤原俊成家の娘の乳母として仕えていて、忠度は藤原俊成の歌の弟子でした。
そのため、忠度とも見知った仲。偶然とはいえ不思議の縁と喜び、招き入れます。

夜も更けて忍び込む怪しの人影、、、。林が不審者を取り押さえると、なんとそれは林の出来損ないの息子、太五平(たごへい)でした。

よくよく事情を聞いてみると、戦に参加してひと稼ぎをしようと父の形見の刀を盗みに来たのだと白状します。

そこへ口入れ屋のもじべいが戦の人手探しに来たので、林は刀の折紙(鑑定書)までつけて息子を送り出します。

その後の展開はこんな感じになります。

忠度の恋人、菊が、忠度を追いかけてやって来て、自分も一緒にお供したいと願います。が、すでに死を覚悟している忠度は、菊の願いを聞き入れようとはしませんでした。

ちなみに今回、菊役をつとめるのは、小さい子供の頃から、祭りの山車の上での日本舞踊や子供歌舞伎で大活躍して来られた小沢早也香さん。
小沢さんがまだ中学生だった頃のインタビューでは、将来の夢として、
「歌舞伎の町・小鹿野が大好きなので、町のため、役に立つ仕事をしたい。」と語っていたそうです。

・・・そして、大人になった現在の小沢さんは、今、小鹿野町の職員として、そして歌舞伎役者として、日々精進されています!(涙)

小鹿野歌舞伎のヒーローとヒロインによる名演技が楽しみです! うふふっ

その後、ものがたりはさらなる展開へ。

忠度が林のあばら家に潜伏していることを知った鎌倉方が、忠度を討ちにやってきます。
が、歯が立たず退散していきます。

この場面は、雑兵も多く登場し、大立ち回りとなるので、ここも観ていて盛り上がるところです。
ツケや太鼓が場面を盛り上げてくれるので、歌舞伎ならでは!の賑やかな演出が楽しめるのではないでしょうか。

芝居のラストは、忠度の生涯の本望とも言うべき、自身の作った歌が、和歌集に選出されたことを知る場面です。
可愛い女の子が、歌の書かれた短冊を桜の枝に付けて、忠度に渡します。

忠度の死を悟りながらも夢が叶ったことへの深い喜びの想い、武士の義、そして別れの予感。。。

様々な人間模様の中で、それぞれの内なる想いが交差し、観客をなんとも切ない気持ちにさせる深い深いお話で幕を閉じます。

あばら家の場は、恋話あり、笑いあり、立ち回りあり、武士の心得ありと・・・、たった一場の中に様々な見せどころがあるお芝居です。
老女・林を軸にお話が展開していく中で、歌舞伎の面白みをたっぷりと楽しめるこの「あばら家之場」

本番が実に待ち遠しいですねえ・・・。